蓼 科 の ベ ン チ 
   
     
 40年ぶりにお会いしたあなたを高原の駅でお見送りしたのは去年の晩秋でした。
春が過ぎ、近くのローズガーデンも落ち着きを取り戻したようです。
それに合わせるかのように、私の心のざわめきも収まり、穏やかになりました。
あなたを想う部屋を心の中に用意することができたようです。

もうすぐあなたにお会いできますね。
お会いしたら、あなたと並んで最初に腰掛けるベンチを、私はもう決めています。
二人の気持ちをもっと近づけてくれる風が流れてくれると思います。

二人並んで庭園を見渡せる椅子
白樺の梢の会話を風が運んできてくれるベンチ
紫陽花が終わったら、遅咲きのバラの香りが漂うベンチ
散策路を歩く人たちに二人で笑顔を返せるベンチ
草花にも憩うことを許したベンチ
私一人で編み物をしたい椅子
バラに囲まれ、紫陽花も楽しめる贅沢なベンチ
渓流の音を聞きながらマイナスイオンに包まれるベンチ
若い二人に譲りたい東屋のベンチ
あなたが一人で腰掛けるかもしれないベンチ
     
     
   
  
    
    
     
    
       
     
    
  
あなたは今度は、どのベンチに私を坐らせたいのでしょう。
分からなくなりました。

今日も
高原の風が
あなたの声に聞こえます。
   
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