マドリードでのあなたとのディナーは
わたしのスペイン最後の夜に
ふさわしいものでした。
デザートを前にして
「美味しい」とひとこと口にすると
あなたは何も気づかぬふうに
一気にお皿を空けてしまいました。
途中で一瞬スプーンを止めたのを
わたしは知っています。
わたしは
四つのハートに気づいていましたよ。
二つはあなたと私の心。
残る二つは
私があなたに見せていない心
そして
あなたが私に見せてくれない心。
スプーンで触れれば
壊れそうなハート。
見つめていると
ぼやけてきました。
わたしは目を瞑ってスプーンを乗せたのでした。
パリッ。
二人の記念すべきディナーでした。
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