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ホテルの窓側の席で
独り静かに朝食をいただいておりました。
ガラス越しに緑濃い木立が見え
その奥から渓流の音が聞こえていました。
食事が終わったら
渓流沿いに散歩しようと決めました。
木立は暗く
ベンチに腰掛けても
気が滅入りそうでした。
渓流に向かって歩こうとした瞬間
私の影が芝生に長く伸びました。
あの時の光です。
あなたと初めての旅のホテルで
あなたと並んで朝陽に向かった
あの時の光です。
ベンチもあの時の光の中です。
違うのは
影は一つだけということ。
渓流の音の中から
聞こえたような気がしました。
「掛けよう」
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