久し振りの再会だし、次にいつ会えるか分からないからと、
友は海に面したホテルのレストランを予約しておいてくれた。
窓ガラス一面が海と空。
白いクロスの上に紺碧のグラス。
他に何もいらないと時夫は思った。
その時、
妻が亡くなる前に庭の夏みかんで作ったジャムだ、
と言いながら、友はバッグからガラスの小瓶を取り出し、
時夫の前に置いた。
ビンから透いて見える濃いオレンジ色が、
碧いグラスと並んで
時夫を見つめているように思えた。

友の妻の思い出を共有しながらのランチは、
エスプレッソで終わり、
友はホテルの裏手にあるチャペルに時夫を誘った。
友が腕を組んで花のシャワーを浴びた庭の隅に、
あの時のベンチがあった。
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