夕べの風はやはり木枯らしだったのだ。テレビのニュースがそう伝えていた。
昨夜布団に入ってからずっと気にかかっていた。昨日のうちに切っておけばよかったのだ。
鋏を手にしかかったのだが、朝のひんやりした空気の中で鋏を入れてあげたい。
そう思って庭に出るのを止めた。
布団に入り、灯りを消した暗闇の中にその姿を鮮やかに思い浮かべることができた山茶花。
昨夜の雨戸を飛ばさんばかりの木枯らしの中で、風をうまくやり過ごしてくれただろうか。
茂男は鋏を手に庭へ急いだ。
花は風の吹いてくる反対側だったのだろう、一枚の花びらの先端がちょっと痛んだだけだった。
茂男は何か語りかけようとしたが思いとどまり、無言で一輪に鋏を入れた。
食器棚から取り出したグラスに水を入れ、山茶花を挿した。グラスはサイドボードに置いた。
なんというタイミングだろう。茂男は数日前に見た夢を思い出した。
|
|