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紀子の迷いは消えた。
返信用はがきの「出席」を丁寧に丸で囲んだ。
そして余白に書き足した。
「みなさまとの再会を胸の動悸を覚えながら楽しみに
しております。そして、故郷を離れた日に駅のホームから
仰いだ南アルプスの山並みをもう一度眺めたいと思います。」
そして、色鉛筆を取り、辰雄が飾ってくれたフリージアの花を
残った余白に描き加えた。
茂夫の目に留まることを祈るように。
はがきの投函を辰雄に頼むと、
「その身体で本当に大丈夫なの?」
と心配してくれた。
「まだ日にちがあるから大丈夫よ」
紀子は自分に言い聞かせるように答えた。
フリージアの向こうに南アルプスの山並みが見えた。 |
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